HBR | フロンティア市場を開拓するには④

2019年2月10日日曜日

ビジネス・経済

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【参照記事】Harvard Business Review:Cracking frontier markets

※英文記事を翻訳しているため、一部日本語が読みづらくなっております。あらかじめご了承ください。

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顧客を惹きつけるにはーまず創造しよう


中国は世界第2位の経済大国です。

国民一人当たりの収入は平均して8000ドルを超えています。

この金額は、世界銀行のカテゴリによれば高中所得国として分類されます。

過去30年にわたり、中国は極端な貧困層から約10億人もの人々を救済してきました。

ほぼ間違いなく、中国は歴史上で最も印象に残る経済発展を遂げてきたといえるでしょう。

しかし、1992年の中国の一人当たり所得は366ドルで、ガーナよりも49ドル少なかったのです。

この時期の中国では貧困が広がっていました。

ですが、1992年に起業家のLiang Zhaoxianは電子レンジ市場を開拓し、世界最大の家電メーカーとなったのです。

今日では彼の会社「ギャランツ」は、世界で販売されている電子レンジのほぼ半分を占めています。

しかし、彼は中国での人件費の安さを利用して輸出を創出する方法を重視しませんでした。

彼はまず、中国で電子レンジ市場を創ることに集中しました。

当時は競争相手があまり見られず、まさにブルーオーシャン市場*であったのです。
レッドオーシャン市場:あらゆる既存市場を指す(携帯電話市場など)。既存の需要を奪い合うため多くは商品の価格を下げる必要がある。
ブルーオーシャン市場:まだ手の付けられていない市場を象徴する(ニトリやIKEAなど)。新たに需要を創出する必要がある。

1992年には、中国で20万台しか売れず、そのほとんどが都市部で売られていました。

当時の平均価格は約3,000元(今の500米ドル)で、ほとんどの市民には到底買えるものではありませんでした。

中国の人々は当時、電子レンジを必要のない高級家電と見なしていました。

また、多くの家電メーカーは中国の人々を、購入を検討することすらできないほど貧乏だとみなしていました。

ですが、Liangはそうとは思いませんでした。

ストーブのないアパートに住んでいる人たち、そしてせいぜい、狭い部屋を温めることができるガスコンロがある人たちです。

彼らは小さくて窮屈な部屋に住んでおり、あまり料理をしないであろうと考えていました。

そのため、彼が開発したビジネスモデルは、そういった顧客層での市場創出を目的としていました。

ギャランツが他のメーカーと同じように、中国の低い人件費を利用したとしても、ギャランツが単に「低コストで生産できるメーカー」であると指摘するのには無理があるでしょう。

最初からギャランツは、典型的な中国の顧客を念頭に置いていたのです。

そして、その顧客をうまく対象とするために、経営陣は斬新な方法を考える必要がありました。

1990年代半ばでは、中国のほとんどの電子レンジメーカーの工場における設備稼働率は約40%でした。

それに対して、ギャランツは24時間体制で工場を稼働させていました。

他のメーカーがテレビで宣伝しているのに対し、ギャランツは新聞広告を採用していました。

これは「ナレッジマーケティング (knowledge marketing)」と呼ばれるもので、製品の使い方や新製品に関する情報を詳しく顧客に提供していました。

この戦略により、広告宣伝費用とマーケティング費用は大幅に削減されました。

それに対し、同規模の売上を誇るライバル企業は、およそ10倍もの費用を費やしていました。

当時のチャイナデイリー紙は、ギャランツは電子レンジについて多くの消費者にもっと知ってもらえるよう努力していると評価しました。

また同紙によれば「1995年に、同社は全国的に電子レンジの使用方法を広めた」とされています。

さらに、150以上の新聞に「電子レンジの使用方法」や「専門家による電子レンジの解説」、また「電子レンジを使った料理のレシピ」などを掲載するようになりました。

同社は百万元(120,481米ドル)もの資金を「良い電子レンジの選び方」といった本の出版に費やしました。

こうした取り組みが強力なブランド認知を生み出し、ギャランツは電子レンジを約1,500元で販売することができました。

これは市場価格のおよそ半分です。

ギャランツは輸出市場において、中国での人件費の低さを優位と見ていませんでした。

同社は人材が必要になったとき、エンジニアや営業担当者、およびマーケティングの専門家を直接採用しました。

また、同社は流通経路が必要となったときは、自ら確立させました。

さらに、事務所や工場、ショールームが必要になれば、同社はそういった施設を建設しました。

他にも、巨大な中国市場にサービスを供給するために、ギャランツは多くの地域雇用を生み出す必要がありました。

同社が生産を開始してからわずか2年後には、約5,000店舗の全国販売ネットワークが出来上がり、また国際的に事業を拡大することができました。

今日では、同社は約200カ国に流通センターを持ち、さらに世界最大の電子レンジ研究開発センターを運営しています。

もし同社の戦略が、輸出市場において中国での人件費の安さを利用するものであったなら、こういった投資は行わなかったでしょう。

ギャランツの例をみれば、市場創造イノベーションにおける地域発展への影響についても考えることができます。

例えば、1993年における同社の従業員数はわずか20人でした。

ですが、2003年頃には1万人を超え、今日では5万人以上を雇用しています。

そして、間接的な雇用を含めれば、その数は遥かに大きくなるでしょう。

取締役副社長を務めるYu Xiaochang氏は、同社は部品やスペアパーツ、修理、メンテナンスなどの分野で間接的に100万人を雇用しているとみています。

1993年の頃は、工場の1ラインで1日に約400台を生産するくらいでした。

ですが2003年には24ラインが稼働し、1日に約50,000台を生産するようになりました。

そして10年後には、1日に約10万台生産するまでに成長したのです。

ギャランツは、2013年に45億ドルを超える収益を上げました。

そしてLiang Zhaoxian氏は、Forbesの世界で最も裕福な人々として掲載されており、その純資産は10億ドルにも及びます。

彼の資産とギャランツの成功は、中国のための、中国における市場創造イノベーションに基づいていたのです。

ギャランツの例は、多くの人が無価値だとみなす経済において成功するために必要なことを教えてくれています。

第一に、これまで述べたように、専門家が中国の人々は貧しすぎると分析したにもかかわらず、Liangは中国で盛況するであろう電子レンジ市場の可能性を見い出しました。

第二に、安価な電子レンジを作ることだけに労力を注いだわけではありませんでした。

同社は、新しい形態の新聞広告を行い、顧客の電子レンジに対する意識を変え、また独自の小売形態や流通経路も構築しました。

これらをまとめて同社のビジネスモデルとして発展させたのです。

第三に、ギャランツは創業初期から技術の開発や研究開発に投資したわけではありませんでした。

初めの頃は、他のメーカーから技術を拝借したのです。

やがて同社は技術開発を行うようになりましたが、創業初期からそうであったわけではありません。

第四に、ギャランツは持続的に成長しましたが、同社は利益の追求をそれほど求めてはいませんでした。

そのため、工場をフル稼働させ、中国での市場を開拓しながら徐々に資源を増やしていきました。

そして、現地の市場で余裕が持てるように、かつ利益が得られるようになって初めて、グローバルブランドとしての地位を構築することができました。

最後に、政府が教育に投資して優秀なエンジニアが出てくるようになるのを待つのではなく、同社は現地で才能のある人材を自身で育てました。

人材の教育や雇用に労力や費用を惜しまなかったのです。
ギャランツの例でみる、多くの人が無価値だとみなす経済で成功するために必要なこと
1.今後盛況するであろう市場の可能性を見い出す
2.宣伝方法や流通形態などをまとめてビジネスモデルとして確立させる
3.初めは既存の技術を用い、のちに独自で発展させる
4.初めはそれほど利益を追求せず、市場を開拓しながら徐々に資源を増やしていく
5.独自で人材の育成や採用に力を入れる

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