HBR | フロンティア市場を開拓するには③

2019年2月9日土曜日

ビジネス・経済

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【参照記事】Harvard Business Review:Cracking frontier markets

※英文記事を翻訳しているため、一部日本語が読みづらくなっております。あらかじめご了承ください。

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保険を契約するー携帯の着メロを購入するくらい簡単


リチャードレフトリーが1990年代~2000年代初頭にロンドンの保険業界で働いていた頃、彼は再保険会社Swiss Reが発表した年次統計分析の2つのデータに疑問を持ちました。

最初のデータは、自然災害で亡くなった人々の数とその場所を示したものでした。

2つ目のデータには、保険の支払額が記してありました。

レフトリーは「2つのデータの間には完全な不一致がある」と指摘しました。

「バングラデシュ、パキスタン、インドのような場所では、人的被害は非常に大きかった。にもかかわらず、保険の支払額は決して高くなかった。」

保険を最も必要としている人々が、最も保険に加入する可能性が低くあっては意味がないのです。

彼はその状況を何とかしたいと考えました。

休暇中にザンビアの貧しい村でボランティア活動に参加したのです。

そこで、彼は夫を亡くした女性とその子どもの家にお世話になりました。

また、その家族の日々の生活がどれほどつらいかということに驚きました。

以前、その家族が首都ルサカに住んでいた時、その女性の夫はHIVに感染しました。

彼の病気は進行して、働くことができなくなり、家族は貯蓄をすべて薬代に使うことになりました。

認められた薬のほかにも、テキトーに配合した効果のない薬を買うことになってしまい、効用がないばかりか無駄な希望を与えてしまったのです。

そうして、その夫は亡くなりました。

心も体もボロボロになったその女性は子どもと一緒に村に帰り、一からやり直すことにしました。

リフトリーはロンドンに戻り、彼の持つ知識を貧しい環境にある人々を助けることに使うことにしました。

そうして彼は新しいビジネスのアイデアを思いつきましたが、彼の同僚はそのアイデアに疑問を持ちました。

その同僚たちは彼を馬鹿にしたのです。

「ザンビアに行ってHIV感染者に保険を販売しようと話していましたが、周りの人たちは私は気が狂っていると思ったそうです。」

ですが、今となっては彼らは私を馬鹿にしていません。

2002年に設立されたMicroEnsureには、新興国で5600万人以上の人々が保険に登録し(2017年だけで1,800万人が登録)、保険金は3000万ドルが支払われました。

保険のビジネスモデルを根本的に変えたのです。

また、マイクロヘルスや政治的暴力、作物への被害、そして携帯電話の補償といった新しい保険も導入されました。

MicroEnsureは、他の保険会社と協力して、世界で最も貧しいとされるいくつかの地域で保険を提供しています。

また、その多くはフロンティア経済にあるのです。

市場を創造するためには試行錯誤が必要でした。

初期の頃、同社は先進国で利用されている保険の低価格版を販売しようとしました。

「『スカイダイビングやウォーターポロといった、(途上国の人がやろうと思わないような)スポーツは除外されています』と記載されたパンフレットを印刷しなければならなかった」とレフトリー氏は指摘します。

ですが「それは大失敗でした」。

費用のかかる広告キャンペーンを行ったにもかかわらず、同社はたった1万人の顧客しか獲得できませんでした。

そこでレフトリーは、製品や宣伝方法を変えて再挑戦しました。

潜在顧客の持つ携帯電話を通じて無料の保険を提供したのです。

つまり、彼らは保険料を払うことなく保険に申し込むことができました。

無料の期間を終え、さらに保険を継続したいときは、その分を購入するだけでよかったのです。

顧客は毎月購入し続けることで保険を継続できました。

顧客が必要な分を購入すると、お金(保険料)が携帯電話会社に支払われ、その保険料がMicroEnsureとパートナーの保険会社に支払われるのです。

契約期間が長くなると、顧客には配偶者用の保険「ダブルカバー」や「家族カバー」といった追加の保険が提供されるようになりました。

そういった追加プランの料金は、通常プランに3セント~1ドルを上乗せするだけでよかったのです。

また、追加プランで得た収益は、MicroEnsureとパートナーの保険会社、そして携帯電話会社の間で分割されました。

それでも、無料保険の提供は当初失敗しました。

申し込みには、名前、年齢、そして近親者に関する3つの簡単な質問に答えるだけでよいのですが、それでも質問が多すぎるということにレフトリー氏は気づきました。

「これら3つの質問のせいで、80%の人が申し込みを完了できませんでした」(レフトリー氏)

多くのフロンティア市場では、年齢と近親者についての質問は簡単に答えられるものではありません。

彼らは自分の年齢を知らない、または気にしないことが多いのです。

また、複雑な家族構成の中では、近親者を指定するのは簡単ではありませんでした。

そのため同社は、ビジネスモデルを根本的に変える必要があるということに気が付きました。

もし同社が、顧客に何も質問しなければどうでしょうか?

この保険は携帯電話を通じて申し込むため、同社は申込者の携帯電話番号のみを知ることができるのです。

たった一つの情報だけで、保険料金を直接携帯電話の持ち主に料金を請求する仕組みをつくれば良いのです。

書類への記入や質問事項、証明書の提出といった面倒な作業は必要ないのです。

「これは保険会社にとって非常に恐ろしいものでした」

データや予測などによって成り立っている保険業界では、顧客の年齢さえ知らずに保険をカバーすることは、本来の保険の考え方には基づいていました。

ですがこの変化によって、「保険の購入はケータイの着信音を購入するのと同じくらい簡単になりました」とレフトリー氏は説明しています。

そして、無料保険は強力なマーケティングツールとなったのです。

顧客が、電話番号だけで保険に申し込めるという新しい保険の概念を理解すれば、より高額な保険商品を顧客に勧めることができるのです。

「やっと方法がわかりました。」とレフトリー氏は言います。

実際に、MicroEnsureはインドで新しい生命保険を開始し、販売初日で何百万もの顧客を獲得しました。

その保険には年齢制限がなく、また携帯電話番号だけを入力するだけで良いのです。他の情報は一切必要ありません。

今日では、他の保険会社が新規顧客へのアプローチを試みるとき、同社にコンサルティングや製品開発サービスを依頼することがあるのです。

MicroEnsureは近年、FT / IFC経営革新賞を4回受賞しました。

同社は参入している市場の80%ですでに収益を上げているのです。

また、同社はおよそ500もの仕事を創出し、新しい市場が創出されるたびにその数は増えていきす。

そして新しい顧客の85%以上が以前に保険を購入したことがないのです。

こういったことが、市場を創造するイノベーターを際立たせるのです。

つまり、顧客が存在しないように見えるビジネスチャンスを見つけ出し、今までのやり方を覆すようなビジネスモデルを生み出す能力が求められるのです。
イノベーター(革新者,イノベーションを起こす人)に必要な能力
1.顧客が存在しないように見えるビジネスチャンスを見つけ出す力
2.今までのやり方を覆すようなビジネスモデルを生み出す力

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